2007年5月、神戸の繁華街・二宮町で、夕暮れの街角に響いた悲鳴が街を震わせた。
倒れていたのは、名古屋を拠点に活動していた山口組系「多三郎一家」の組長、後藤一男氏(当時65)。
刃物による刺傷が命を奪い、街はその衝撃に凍りついた。
あれから18年――
ついに長年の沈黙を破る者が現れた。
神戸山口組・山健組傘下の幹部、**勢 昇(せい・のぼる)容疑者(76)**だ。
長い逃亡の果て、ついにその身柄が確保された。
◆ 勢昇容疑者のプロフィール
勢容疑者は2025年現在76歳。
暴力団幹部として、長年組織内で存在感を放ってきた人物だ。
事件当時は、組織的殺人の現場で“指揮役”を務めたとされ、警察はその責任の重さを指摘している。
逮捕時、警察は神戸市東灘区の路上で勢容疑者を確保。
容疑は、2007年5月31日に神戸市中央区二宮町の路上で多三郎一家の後藤組長を刃物で刺して殺害した組織的殺人の疑いだ。
警察は実行役の供述などから、現場の指揮をとった人物として勢容疑者を特定。本人の認否は現時点で明らかにされていない。
76歳という年齢を考えると、逃亡期間中の生活や、どのように潜伏を続けてきたのか、極めて謎に包まれている。
◆ 所属組織――神戸山口組・山健組の傘下幹部
勢容疑者は指定暴力団 神戸山口組・山健組傘下組織の幹部として活動していた。
山健組は、六代目山口組から分裂した神戸山口組の中核を担う組織で、全国に支部を持つ。
その中で勢容疑者は実行部隊を統率し、組織内の指揮・指示を行う重要な役割を担っていたとされる。
事件の背景には、名古屋を拠点に活動する多三郎一家との確執があったとされ、
抗争の中心に位置する幹部として、勢容疑者の存在は“事件の鍵”だったと言われている。
組の論理に生き、命令と忠誠の狭間で動いたその人生は、まさに抗争の最前線を体現していた。
◆ 家族構成――公表されていない沈黙の背景
勢容疑者の家族構成や身内の情報は、報道では一切公表されていない。
婚姻歴、子どもの有無、家族の逃亡支援の有無など、私生活に関する情報は完全に伏せられている。
暴力団幹部として活動してきたこと、そして18年もの逃亡生活を経たことを考えると、
家族がいたとしても公に関与することはなく、静かに身を潜めていた可能性が高い。
この沈黙は、単にプライバシーの問題だけでなく、組織内の掟や危険性とも深く関わっている。
◆ 自宅住所――“住所不詳”のまま逮捕
逮捕時、警察は勢容疑者の住所を「不詳」と発表した。
長年、神戸市内や関西圏の知人宅や組関係者の支援先などを転々としながら逃亡していたとみられる。
その間、兵庫県警は全国的に情報を追い続け、ついに逮捕に至った。
また、逃亡を助けたとして、京都府木津川市の無職・中田智富容疑者(63)も犯人隠避の疑いで逮捕されており、
勢容疑者の潜伏には、支援者や組織のネットワークが関与していた可能性がある。
◆ SNS・オンライン活動――存在は確認されず
報道や警察発表を確認する限り、勢容疑者本人名義の公式SNSアカウントは存在しない。
年齢や立場から、オンラインでの活動はほぼなかったとみられる。
匿名アカウントや第三者による代理投稿の有無も報道では確認されていない。
現代のSNS社会において、76歳で影響力を持つ暴力団幹部がネットに姿を現さなかったことは、
逆に長期間の潜伏を可能にした要素の一つと考えられる。
◆ 事件の経緯(時系列)
- 2007年5月31日:神戸市中央区二宮町の路上で多三郎一家・後藤組長が刺殺される
- 2007〜2009年:実行役含む13人逮捕、勢容疑者は指名手配
- 2010年代前半:殺害指示役とされる山健組系組長が起訴
- 2013年:一審・神戸地裁で無罪判決
- 2014年:二審・大阪高裁で逆転有罪(懲役20年)
- 2015年6月:最高裁が上告棄却、刑が確定
- 2025年10月26日:逃亡18年を経て勢昇容疑者逮捕
この事件は、単なる刺殺事件ではなく、組織抗争や権力構造の複雑さを象徴するものとして長年注目されてきた。
◆ 今後の焦点
警察は現在、勢容疑者の潜伏経路や資金源、支援者のネットワークを徹底的に洗い直している。
また、事件当時の組織関係者や実行犯との接点を追い、18年間の逃亡生活の全貌を明らかにすることが課題だ。
勢容疑者本人の取り調べで、事件の詳細や組織内での指示の有無がどこまで明らかになるか、
今後の捜査が事件の核心を照らす鍵となる。
◆ 終章――沈黙を破った76歳
18年間、姿を消していた現場指揮役・勢昇。
背後には組織の力と、静かに生き延びた執念があった。
そしてついに、光の下に現れたその姿は、長く続いた抗争の一端を象徴している。
逃亡劇の終幕は、事件の全貌解明の始まりでもある。
神戸・暴力団抗争の裏側に隠された人間ドラマ――
その真相は、これから警察の調べによって徐々に明らかになっていくだろう。
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